マレーシア縦断の旅 6日間

2013年6月8日(土)~13日(木)

マレーシア国旗
マレーシア国章

 昨年11月に〔桂林・龍勝〕の旅に行ってから半年も経過した。
 そろそろ旅心の疼きが首をもたげ、特に今年は私の6度目の干支(巳年)の誕生年でもあるし、例年通り誕生日は海外で迎えたいものと思い始めていた。リーマンショック以降の世界的大不況の煽りをまともに受け、3年間で外国の投資信託で1,700万円が消し飛んでしまって、旅行の規模も安い物にならざるを得ない。そんな矢先トラッピックス倶楽部5月号が送られてきた。安い料金の旅商品は韓国・台湾・中国という隣国だが、いわゆる従軍慰安婦をめぐる日本維新の会の橋下共同代表の発言で、これらの国民からの猛反発が起こり、また中国では反日デモの収束を見たものの、鳥インフルエンザ(H7N9)における感染者が131人(うち死亡者が35人)という物騒な環境ではこの3国は敬遠せざるを得ない。頁を捲っているとオラウータンの写真が目にとまった。
 《 注! ココがオススメ・オラウータン保護島で愛らしい仕草を御覧ください。この島ではオラウータンがオリの外、人間がオリの中に入り見学します 》これは面白そうなので即決である。
 商品名は〔満喫 マレーシア縦断の旅6日間〕で、6月8日出発 59,980円というのがあった。その他おひとり様部屋追加代金が30,000円、燃油サーチャージ25,400円と空港諸税4,780円が掛かる。合計120,160円。マレーシア縦断と銘打ってあるが、この旅はマレー半島のみの縦断でボルネオには行かない。
 昨年の桂林・龍勝の旅を御一緒した、ふれあい大学の同窓生Kさんが   「何処かへ旅行するときには必ず声を掛けて欲しい」と仰っていたので、Kさんに電話を掛けてみた。Kさんも二つ返事で参加すると言って下さった。Kさんと相部屋にすることで、ひとり部屋追加代金はなくなる。
 「ホテルに泊まる4日間だけ鼾や歯ぎしり・おならや寝言を我慢するだけで、30,000円を払わないで済むのだから相部屋でもいいですよね」妙な説得の仕方で、相部屋を了承して戴いた。
 旅行代理店[tabiデスク]に申し込む。8日出発は催行決定が保証されている。私が申し込んだのは5月9日で1ヶ月を割っていたから、変更やキャンセルをするとキャンセル料が発生する。この時点で我々を含めて19名が申し込んでいると云うことだった。

6月8日(土曜日)出発

 関東地方は梅雨入りしていた。が、梅雨入り宣言の後、雨らしいのは1日だけで、出発日も天気は上々雨の心配はない。Kさんがスーツケースを引いて行くので、私もそれに合わせて今回も宅急便を使わず、自ら引いて6時30分に家を出た。春日部駅から野田線に乗る。南桜井駅7時5分発・柏方面行きホーム前から2両目1番ドア内で合流を決めてある。約束より二本早く南桜井駅に着いた。Kさんのことだから既にホームにいるものと思っていたが姿が見えない。だがすぐ現れた。たばこを吸いに喫煙所まで行っていたのである。挨拶を交わし約束の一本前の電車に乗った。柏から船橋行きに乗り換え、新鎌ケ谷駅にて京成成田スカイアクセス線に乗り換える。タイミング良く特急が来た。Kさんが一服する間もないのが気の毒だった。土曜日とあって、どの電車にも座ることができた。成田空港第2ターミナルビル駅には9時に着き、空港3階の阪急交通社受付カウンターに行く前に、Kさんは表に出て先ず一服である。私も付き合って、ゴミ箱の上にカメラバッグを置いて、ちょっと手を離したらバッグが下に落ちてしまった。デジタルカメラは落下などのショックに弱いから、出発前だというのに大変なことになったもんだと悔やんだ。
 受付カウンターで往きの〔成田-クアラルンプール〕・〔クアランループ-ペナン〕迄の2枚のチケットと帰りの〔e-チケット〕を受け取る。GカウンターにあるJALの自動ATMにパスポートを差し込みそれぞれの機内の座席を決める。Kさんは窓側、私はトイレが近い関係から通路側を選んだ。そしてスーツケースを機内に預け、目的地ペナン引き渡しの半券(クレィムタッグ)を受け取った。
 午前10時にクアラルンプール空港内での乗り換え案内をするというので、それ迄は空港4階のレストランにて、生ビールで旅行結団式を催した。先ず落としてしまったカメラのチェックである。昨日出発の準備で、カメラの充電式の電池が長持ちしないので、取扱説明書では約300枚撮影できるという、単3×6本を充填するバッテリーグリップを取り付けてきた。以前少し使った電池4本と新品2本を充填してきてある。スイッチをオンにしてシャッターを押したが、何の反応もない。やはり壊れたかと思いつつ、電池を入れ直したりしていたら、表示文字が黒くなった。「大丈夫だったよ」と言いKさんを写そうとしたら、やはりシャッターがおりなかった。バッテリー残表示がゼロになっているのが見えた。もしかしてと思い、空港の売店で単3を6本買った。1,008円もしたのには驚いたが、カメラは正常に作動するようになった。落とさなかったらこのことに気が付かなかったのだから、ラッキーだったのかも知れない。
 安い旅行は日本からの添乗員が付かない。今回のツアー参加人員は21名である。
 ([クアラルンプール国際空港]は1998年6月30日に開港。[森の中の空港、空港の中の森]をコンセプトに、日本の建築家・日本芸術院会員の黒川紀章がターミナルビルを含む全体計画を設計し、メインターミナルを大成建設、サテライトを竹中工務店が施工している。実際に周辺はプランテーションされたアブラヤシの森に囲まれている。最終的には2つのメインターミナルと4つのサテライト、1つの格安航空会社ターミナルに、滑走路4本で運用される計画であるから空港はかなり大きい。国内線に乗り換えるにはメインターミナルとサテライトを結ぶエアロ・トレインに乗らなくてはならない)写真を見せながらの説明を聞いてから出国審査に向かう。
 前回の桂林・龍勝旅行の時は、Kさん持参のライター3個は没収された。中国の航空会社はライター類は絶対に認めてくれない。ホテルに着くまでたばこを吸えなかったKさんはホテルに着くや近くの売店で、いの一番にライターを買っていたのが可笑しかった。今回はJALだから大丈夫と、ライターとマッチを持参でX線検査を受けていた。OKだったのでにこにこ顔になっていた。
 JL(日本航空)-723便のフライトは11時30分である。搭乗開始までの40分間私は350ml缶ビールを2本飲んで寛ぎ、Kさんは喫煙所を探して一服、二服、何とまあ忙しいことである。クアラルンプールまでの飛行時間は約6時間20分である。
成田を飛び立って1時間後にドリンクサービスが始まった。Kさんは余り沢山は飲まないが、ちょこっとはビールを嗜む。JALに乗るのは久しぶりだから(2010年1月に会社更生法の適用を申請し、再建リストラ後の)サービスがどんなものか興味があった。先ず
 「缶ビール(350ml)をください」と言うと
 「銘柄はキリンとアサヒとサントリーが御座いますがどれになさいますか」と聞いてくる。Kさんとアサヒを貰い、空になったので2本目をリクエスト。Kさんはあきれ顔で私を見ていて1本でお仕舞い。暫くすると機内食のサービスが始まった。この時のお飲み物Kさんは缶ビール。私は赤ワインのボトル(184ml)を頂いた。ティーサービスが廻ってきたときにも私は缶ビール、Kさんはコーヒーを頼んでいた。後はKさんのお喋りに耳を傾け、くたびれると眠る。空港からの生ビールから数えると、これまででビール6本とワイン1本を飲んでいるから、機内で一番トイレに通ったのは私だろう。トイレの奥にキャビンがあって、2度ほどビールを貰ってきた。機内で飲んだビールは合計5本、気持ちの良いサービスを受けた。会社更生リストラ以前のJALに戻ったのが嬉しかった。
 マレーシアは日本との時差が-1時間、マレーシア時間の18時に予定通りマレーシア国際空港に到着。流れに従って入国審査となる。マレーシアでは、2012年6月1日より、出入国(ED)カードと税関申告・検疫申告が完全に廃止され、空港での提出が不要となった。尚、EDカード廃止の代わりに、指紋認証(両手)が取られるとの情報を得ていたが、パスポートを提出しスタンプを押して貰うだけの簡単な審査だった。空港内の案内表示は日本語でも書かれているから、迷うことなくエアロ・トレイン乗り場に辿り着いた。 通路を進むと空港内とは思えないドデカイ十字路に差し掛かると、両サイドには長いコンタクトピアが延び、正面には1km程離れた〔サテライトビル〕まで乗客を運ぶ〔エアロ・トレイン〕の乗り場が通路の両サイドにある。3両連結で、約1分30秒ほどの乗車時間だが、車窓からは広い空港が見渡せた。成田空港のシャトル・トレインよりもかなり速いスピ-ドなので吃驚した。国内線のサテライトには土産物店はあるがアルコールは売っていない。イスラム教国だと云うことをすっかり忘れていた。その上レストランやドリンクバー等が一つも無いのには困ってしまった。待ち時間が2時間以上もあるのに、ただぼんやりゲートが開くのを待っているしかなかった。Kさんは喫煙所を探して結構動き回っていた。(今にして思えば国際線のメインターミナルまで戻れば、バーなんかで時間つぶしが出来たのにと悔やんだものである)

 クアラルンプール国際空港21時15分発MH(マレーシア航空)-1166便も予定どおりのフライトだった。機内ではほんの軽い菓子パンとジュースが出たが、夜食としては不十分だった。ホテルでは夜食が出ないので、もしもの場合を考慮して菓子パンをリュックに入れておいた。
 [ペナン(バヤンレパス)国際空港]には22時5分に到着。ターンテーブルからスーツケースを請け出し出口へと向かう。出口ではトラッピックスの赤い旗を持った現地添乗員(ガイド)の男性が、スーツケースに取り付けられた名札を見て一人一人をチェックしていた。
 全員確認後、旗の後ろに付いてバスまで移動、スーツケースを運転手に託して乗り込む。バスは大型の45人乗り、全員が二人分の椅子を使えるゆったりしたスペース、今晩から最終日12日の出国迄利用することになる。
 空港から今晩宿泊する〔ハイドロホテルペナン〕までは約45分で着く。先ずはガイドの自己紹介が始まる。黃さんという48歳のチャイニーズ系の男性で、地名など早口で喋るから聞き取りにくいところもあるが、まあまあ日本語は流暢の方である。ペナン島についての大まかな説明の後、マレーシアの通貨リンギットへの換金が始まった。昨日の円相場は円高気味で、1$=94円位までになっていた。何処の国でもガイドが換金をしてくれるので助かる。空港で換金をしてこなかったから、空港よりレイトが良いか悪いかは言っていられない。黃さんのレイトでは1リンギット=35円で1,000円単位でいつでも交換してくれるという。
 「5日間の滞在で、10,000円を換金すれば何とか間に合うでしょう」私もKさんも10,000円を換金し、封筒に入った285リンギットを受け取った。
 (〔リンギット〕という言葉は元来、マレー語で「ギザギザな」を意味する形容詞である。16~17世紀におけるポルトガルの各植民地で広く流通していたスペイン・ドル銀貨の形状(ノコギリ状の縁)を指し示していたことからきている。また、シンガポール・ブルネイもリンギットと呼ばれたため、マレーシア通貨の公式名称は Ringgit Malaysia(RM)となった。
リンギットはすべて紙幣で100、50、20、10、5、2、1の7種類有り、大きさは横13.2×縦7cmと小さくおもちゃのようで、初代国王アブドル・ラーマンの肖像が印刷されている。従来発行し流通していた500、1,000RM紙幣は法的価値を失って現在は使われていない。なお、新1RM紙幣と新5RM紙幣はポリマー紙幣(材料として合成樹脂を使用)である。プラスティック紙幣とも呼ばれ一カ所が透けている。なお、100RM紙幣も流通量が少ないため、日常的には50RM札が高額紙幣と見なされている。リンギットの下の貨幣単位は〔セン〕である。1RM=100セン。センはすべて硬貨で50、20、10、5、1の5種類がそれぞれ流通している。ただし、1セン硬貨はほとんど使われておらず、計算上端数が生じた場合、5セン単位に切り上げるか、切り下げて計算される。なお、従来流通していた1RM硬貨は2005年12月6日をもって廃貨となっている)
 黃さんの説明
 「今晩泊まる〔ハイドロホテルペナン〕に到着したらそれぞれバスからスーツケースを受け取りロビーでお待ち下さい。部屋のキー(カード式)を受け取られたら、各自荷物を持ってお部屋にお越し下さい。ホテルには売店がありません。今晩は夜食がでませんので、軽食やお飲み物を必要な方は近くにある24時間営業のコンビニを御利用なさって下さい。ホテルのチップ(枕銭)ですが、一人1リンギット(35円)置いてあげて下さい。これは貧富の国ですから従業員への報酬の一部と思って下さい。このバスもですが、マレーシアではクーラーは22度位にしてあり、調整は効きません。外は暑いから観光してバスに戻ったときは涼しく感じますが、少し経つと寒くなってきます。ですからいつでも羽織れるもの、女性の方は膝掛けなどをお持ちください。ホテルの部屋もクーラーが効かせてあります。温度調整は出来ますが、ホテル全体が涼しくしてありますから、寝るときは切った方が良いと思います」
 ホテル到着後キーが配られる。
 「部屋番号は紙袋に書いてあります。カードには書いてありませんから覚えて下さい。忘れると入れません。最初の数字2桁は階番号、次の2桁が部屋番号です。水道の水は飲めますが、ポットで沸かしてからお飲みなった方がベターです。コップなどが置いてあるところのペットボトルの水はサービスです。冷蔵庫の水は有料となります。今晩、私はこのホテルには泊まりません。住まいがこの近くですから家に帰ります。部屋によってはバスタブが御座いません。その替わりにシャワー室が付いております。最近の高級ホテルの傾向はシャワー室のみが多くなっています。バスタブがなかったら良いお部屋だと思って下さい。部屋に入って何か不都合なことが御座いましたら今から20分だけこのロビーで待っておりますからここ迄来て下さい。エレベーターの表示ではロビーは「G」階です。携帯番号を申し上げますから緊急な用事が御座いましたら夜中でも電話をして下さい(Kさんがメモを取る)。モーニングコールは7時に各お部屋に掛けさせます。明日朝の食堂はこの階の右奥です。部屋番号を言うだけで、朝6時30分から食べられます。なおスーツケースは部屋の外に出さないで、出発の時にご自身で運んで降りてきてください。明日の出発は8時30分です。10分前に此処へ集合して下さい。何も精算するものが無い方はルームキーは私にお返しください。何か質問は御座いませんか? お休みなさい」とまあ立て続けに口頭で喋りまくっていた。時間は23時30分を過ぎていた。それぞれ皆さんはエレベーターで部屋に散っていった。
 私の旅では大事な仕事として、日本から用意してきた〔キャメロン・ハイランドの夜景〕絵ハガキにメッセージを書いて切手を貼り投函する仕事がある。郵便切手を18枚買わなければならないので、黃さんに聴いてみた。
 「郵便切手を買いたいのですが、ホテルで買えますか?」
 「このホテルでは切手は売ってません。書き終えたはがきをホテルのフロントに持って行き、お金を払えば出して貰えます」
 「日本まで絵はがき1枚幾らするんですか?」
 「1リンギットか2リンギット。ホテルによって値段が違います」
 「ええ? 決まってないんですか?」そんないい加減なことってあるんだ。明日フロントで聞くことにして、部屋に荷物を置きKさんとホテルの近くのコンビニへ行ってみた。Kさんは350ml缶ビール1本を6RM(210円)買い、私は500ml(8RM・280円)缶ビールを2本買って戻った。
 嬉しいことにバスタブ付きの部屋だった。長旅の疲れをバスタブでほぐし、菓子パンを囓りながらビールを飲んで、Kさんには先に休んで頂いて、絵はがきにメッセージを書き終えて1時30分に横になった。