武陵源と鳳凰古城
6日間

3月8日(木曜日) 第5日目

今日の予定は途中“王村”へ立ち寄り、張家界まで戻り、夕食を済ませた後、張家界荷花空港から上海浦東国際空港までフライト、22時55分着後、ホテルへ入ると云うハードスケジュールである。
 モーニングコールは午前7時である。  6時には起きて荷造りをし、スーツケースを廊下に出して、レストランへ行った。 遊ぶ時間の経つのは早いもので、今日で旅行は最終日となった。昨日のうちに南方長城を見学しておいたので、今朝の出発は9時、ゆったりした時間が取れた。

 王村までは約140km、3時間30分掛かる。途中トイレタイムを取ってくれて、来るときと同じ所で、真っ黒に汚れた車体を洗ったりして、1時近くに王村へ付いた。直接豆腐料理のレストランに入った。雨は降らなかったが、曇天で気温は低かった。
 “王村古鎮”も古き中国を感じさせる、少数民族の土家族が暮らす静かな村だった。が、映画『芙蓉鎮』(1987年いろいろな賞を受けた)の舞台として使われてから有名になった。

芙 蓉 鎮

 《 芙蓉鎮は、日本では1987年に公開された中国映画で、監督は謝晋、古華の筆による同名の小説に基づいている。文化大革命期の混乱を生きた若い女性の辛苦に満ちた人生を描き出した映画である。中国湖南省湘西トゥチャ族ミャオ族自治州永順県の1つ、王村鎮をロケ地に撮影された。1980~1990年代に現れた[傷痕ドラマ]の1つで、精神的トラウマを描き、映画は上海映画作製所により作成された 》

 その事があって、2007年に村(鎮)の名前を王村から芙蓉鎮に変えた。一歩路地裏に入ると、石畳の続く地元の人の昔ながらの生活空間があり、以前と変わらない村の姿が残っている。映画に出てきた名物“米豆腐”を商う店は、映画と同じ状態で営業している。
 防御のため、芙蓉村は玉石で築かれた壁で囲まれている。その壁には銃眼が開けられ、周囲には形がそれぞれに異なる七つの門がある。東門が正門で、それは1341年に建てられた屋根裏部屋付きの建築である。建物の下にあるあずまやは、村の年寄りたちが世間話をする場所となっている。

長 塘 街

 正門から入ると、長さ220mの広い道があり、地元の人に“長塘街”と呼ばれている。村の道はいずれも玉石を敷き詰めた舗装だが、長塘街だけは黒いレンガで舗装され、両側には石で階段が敷かれている。芙蓉村では正門から入って一度ぐるりと曲がってようやく長塘街に辿り着く。長塘街は村で最も賑やかなところで、道の両側には旅館やレストレン、土産物店が建ち並んでいる。登り詰めた所は崖になり、その下を滝を持つ楠渓江が流れ、いい景色が観賞できる。街の店の奥にある見晴台からも景観を楽しめるが、30元(390円)も取られるというので見るのを止めた。
 独特な街並みを写していたら、シャッターがおりなくなった。4GBのCFカードが満杯になってしまったのである。うっかりしてスペアのCFカードをバスの中に置いてきてしまった。取りに戻ればと考えたが、再入場するのに120元(1,560円)を払わなくてはならない。観光スポットもここまでだし、今迄撮影した写真の中から、重複したものや、カメラアングルの良くない写真を削除して、撮影を続けた。
 芙蓉村の南門はとても重厚な石で築かれている。壁の下には西の楠渓江からきれいな川の水を引き入れる用水路があり、村の女性たちの洗濯や野菜洗いの場所となっている。朝食の後、女性たちは子供を連れ、洗濯物や新鮮な野菜を入れた袋を提げてやって来て、それを川の水で洗いながら談笑している。
 古鎮だけあって[古玩]の看板が掛かっている古道具店や古美術の店が多かった。冷やかしに店に入ったら、店主があれこれ持ってきて買えと迫ってくる。木枠に厚さ0.5mm×5cm×12cmの純銀の板4枚に中国の風景をプレスした物を差し込む置物があった。500元(6,500円)だというのを、200元なら買ってあげると答える。300元までしか負けられないと云う、駆け引きの奥の手、要らないと店を出る振りをしたら、200元(2,600円)でいいと折れたので、欲しくもない銀製品を買う羽目になった。

 午後2時に芙蓉鎮を出発した。張家界までは約110km、2時間30分掛かる。バスの中では皆さんが熟睡していた。
 4時頃に“砂絵博物館”に着いた。3階建ての博物館に入ると、1階は写真撮影禁止で、日本語を話せるガイドが説明を始めた。
 砂絵博物館はトチャ族の画家・李軍声氏の直販画廊である。

砂 絵 博 物 館

 《 李軍声は貧乏な農民の子として1963年に生まれた。絵を描くのがとても大好きで、1984年油絵を学んだ。だが、油絵はお金がかかり続けることが出来なくなった。そこで、思いついたのが砂とか岩を顔料にした画法であった。そして、独自の方法で砂絵を作り上げたのである。それが、砂石画である 》
 武稜源の絵を描くのには格好の材料であった。これが有名になって、2005年の名古屋万博にも出品している。2階3階は写真撮影が許され、3階建ての直販画廊では、売り子がうるさく作品販売をしていた。最上階には彼の作品が、20~30万円から買える。2階は彼の弟子たちの作品を2~3万円で売っていた。落款はどちらも、軍声書院となっているが刻印が違う。
 最初に下書きをし、李軍声が作ったのりをつけ、そこに砂をかける。接着力が強力でどんなにこすっても剥がれないのりは企業秘密だそうで、これを繰り返しカラフルな絵にしていく。李は中国で砂絵の発明者として一躍有名になった。

砂 絵 の 作 品

 ここでしか買えない砂絵なので、額入りの絵を買いたかったが、運ぶのが大変なので、日本円で3万円の掛け軸を一幅買った。同じような武陵源の奇岩の絵が沢山あった。ツアーの中に画家さんがいらっしゃったので、その方に選んで頂いた。丁重に梱包してくれた。家にて早速飾ってみた。砂は剥がれないが、丸めて運んできたので、変な癖ができてしまった。
 張家界荷花空港からのフライトは21時20分である。現地ガイドの謝とは空港でお別れとなった。上海浦東国際空港に23時55分に着き、バスでホテルへ向かった。空港に近いホテルであった。敷地内に24時間営業のコンビニがあったので、ビールを買って、日記を書きながら飲み、午前2時過ぎにベッドに入った。