タイ・スリン46回象祭り とピピ島の旅

11月17日(金曜日)・第3日目

スリンはバンコクから475km(車で約6時間)の所である。周りには遺跡が沢山ある、全くの田舎町である。
 世界的にはこの象祭りは有名で、11月の土曜・日曜日に開催され今年は11月18日・19日の二日間である。

 スリンは長距離なので、先達て空港まで迎えに来てくれた ワオー君が車の運転手を受け持ってくれた。
 サンパンの家を午前6時に出発し、2度の食事とトイレタイムなどを取り、スリンへは午後の4時近くの到着となった。
 この時期一年も前からホテルは予約されてしまい、何処も満杯、泊まるところはないとの情報は掴んでいた。
 イベント(第46回象祭り)のチケットを買っておかないと心配なので一旦スリンに入った。
 その後近くの街で泊まることにして、街で一番大きなホテルでチケットの前売り券(500THB・1,500円)を購入した。
 私達は誠にラッキーだった。其処のホテル THONG TARIN に2部屋の空き部屋が取れたのである。
 サンパンと、車の運転手 ワオー君が、そして御一緒した弘田さんと私でそれぞれ分かれて部屋に入った。
 荷物を部屋に納め、象祭りを明日に控えたスリンの街を下見した。

 象祭り会場の近くには中学校と高校・大学が密集していて、丁度下校時間にぶつかった。トラックを改造した乗り合いバスに子供達がぎっしり乗り込んで発車を待っている。
 この辺りでは象祭りの飾り付けも見えないし、象の姿も見あたらない。
 狭いスリンの街を行ったり来たりして祭り会場へ乗り付けると、翌日のためのリハーサルをやっていた。
 道路にはあちこちに象の糞がこんもりと落ちている。
 商店街を高さが3.5mもあろうかという大きな象が闊歩している。思わず声が出てしまいそうな見上げるほどの威容だった。

街を闊歩する高さ3.5mもあろう巨像

 象の上に乗りのんびり構えている象使いが大木にとまった蝉のように見えた。 残念に思えるのは、象の牙の先の突起部分が平たく切り落とされているのが、どうしてだか? 解らない。勿体なくも情けなかった。
 生まれたばかりの小さな象がいた。体中に黒く長い毛を生やしていてお母さん象の腹の下にもぐって、お乳を吸っている。

生まれて2習慣の子像

 その小さな象の首輪にお母さん象の首に繋がるクサリが括られているのがなんとも忍びない光景だ。逃げやしないのだろうに、そうするしかないのかな?
 
 夜食はホテルの大食堂で、タイダンスや唄の実演を見ながらのバイキング、朝食も付いて、一部屋2,300THB(6,900円)である。スリンでは象祭り前夜なので特別高かったそうである。
 此処でも食後は、ホテル内にあるマッサージへ足のばし。天国天国よか気分だった。

11月18日(土曜日)・第4日目

象祭りの当日、起床は6時。朝食を済ませ、7時にはホテル出発である。
 前日街の中は車で一巡し、ある程度調べてある。早くホテルを出ているからフェステバルの会場に一番近い無料駐車場に車を止めることが出来た。
 イベント開始は午前8時30分。一時間も前に指定席に着く。早い方だろうと見回すと、会場は7割の観衆で埋まっていた。
 時間通りに祭りは始まった。お偉いさんの挨拶の後、ブラスバンドを先頭に2週間前以内に生まれたばかりの赤ちゃん象をお腹の中に包み込むように伴って象3組が入場、表彰を受け御馳走のリストと花束を貰ったりしていた。

表彰を受ける生まれて2週間以内の赤ちゃん象

 私は観覧席から会場内に降り、お偉いさんが座って居る会場の中心まで歩いて行き、正面からこの親子象を撮影した。自分の席に戻る時、
 「貴方日本人でしょう? 恥を知りなさい」と、日本人の女性客からお小言を戴いてしまった。
 沢山のエキストラのダンスの後、左右のゲートから象の入場である。

300頭の象大集合

 小さいのから中位の象、逞しく立派な牙を持った大きな象やら、ごちゃごちゃ出て来る、出てくるまるで雲霞(象のですよ)のごとくである。
 象一頭に一人の象使いが首根っこに乗っている。象と一緒に歩いている象使い、子供の象使いもいる。
 実行委員会の発表では今年は300頭の象が集まったそうである。
 こんなに沢山の象が集められても象は喧嘩なんかしないのだ。
 鼻を前の象の尻下から突っ込んで股下の臭いを嗅いで、相手を認識するらしい。
 そして前の象の尻尾に鼻を絡ませて、一列になって行進すのである。
 ついつい声が出てしまう。楽しくてしょうがない。数えることは出来ないが、それらの象が幾重にも円を描いて会場内を行進するのだ。
 その象群があちこちで後足立ちしたり、逆立ちをしたり、寝そべったりして芸を御披露するのが嬉しい。
 中には音楽に合わせてダンスをしている子象もいる。まるきし可愛い。
 こういった浮き浮き気分は何年ぶりに味わったろうか? 遠い日本からわざわざ来た甲斐がたっぷり有ったと感じたものである。
 数百頭の象が退場した後は、グランドには沢山の御馳走(糞)が残った。その糞を掃除するのかと思いきや、次の出し物が始まり、続くのだ。
 スタンド指定席にはビニールシートの屋根が着いていて、直射日光はかろうじて遮ってくれているのだが、
一般席は無料でも太陽光がまともに照りつけている。
 それぞれが日除けに傘を広げるから、後ろの人にはショーが善く見えない。指定席を買っておいて正解だったと、つくずく思ったものである。
 気温は午前9時頃で摂氏34度にもなっている。
 広い会場を沢山の踊り手が出てきて踊る。出たり引っ込んだりするだけでくたびれてしまうだろうに、ずっと踊り続けているのには感心させられた。(会場のグランドはサッカ-場3つ分もある広さだ)

山車に引かれる釈迦像
子像の退場

 いよいよクライマックスである。
ビルマ(現在のミャンマー)軍とアユタヤ(タイ軍)の古戦絵巻が始まった。

[ 戦 争 絵 巻 ] ビルマ王とタイ王の一騎打ち
勝ちどきを上げるタイ軍団
凱旋するタイ軍団

 重戦車の役割を果たす巨大象は、2mも有ろうかと思われる2本の牙をこれ見よがしに突き出し、鎧をまとい武器を装着した象使いと兵士数人を乗せている。
 騎馬が走り、槍や盾・剣で武装した歩兵軍団が双方から出てきて雄叫びも高らかに戦闘ショウを展開する。
 大砲音が唸り城壁に(当たったように)火薬が爆発する。
 演出は見え見えでも、煙幕の中で繰り広げられる、象を使った戦争布陣を実際に見る事が出来た。
 日本の川中島の決戦さながら、象に乗ったビルマ王とタイ王の一騎打ちで、タイ国の王が勝つというストーリーだった。

会場を一周して退場する像

 その後は象の鼻フラフープや、鼻に矢を絡めて投げる風船割りなどの芸があった。
 この日にバンコクまで戻らなければならないので、イベント終了後は早々と駐車場に向かった。
 会場の外には背中に二人乗りの椅子を括り付けた(遊覧用)象や、ビニール袋にサトウキビが入った袋を鼻にぶる下げて売っている象などでごちゃごちゃだった。
 サトウキビは一袋20THB(60円)だ。これを買いあげて、観客から象へプレゼントするわけである。
 イベント終了後の会場(グラウンド)にもこんもり残っていたが、道路という道路は象のうんこで一杯だった。
 祭りの最中はサトウキビを食べているからか、牛のウンチと同じ様な繊維質のうんこであった。
 悪臭は御愛敬と言うところでしょうか?

《 スリンの象祭りはタイの3大祭りの一つで、一番規模の大きい祭りが象祭りである。(残りの2つは、毎年7月に開催されるキャンドル・フェスティバルと、ロイクラトン・フェスティバルである)
 スリンの象祭りは[一番規模の大きい象祭り]と呼ばれていることからもわかる通り、タイでは各地で象と一緒に楽しむイベントが開かれている。その中でもこのスリン象祭りはその起源もさることながら、参加者の規模から3大祭りとして広く知られている 》

 今回の旅行目的はこの象祭りを見学するための旅である。
 出来ることならもう一泊して象で一杯になったスリンの街の光景などを取材したかった。
 然し、御一緒した弘田さんはタイが初めてなので、弘田さんの御希望の観光地へも行かなくてはならない。
 次なる観光地はプーケット。翌日のフライト時間も早いことだし、8日間という日程内で欲張った観光をする関係で、後ろ髪を引かれる思いでスリンに別れを告げた。