ギアナ高地・エンジェルフォールズ

4日目・9月17日(日曜日)

午前4時起床。オプショナルツアー(350$・40,000円)は希望者だけ。
 ヘリコプターによる[ロライマ山観光]が組まれまれていた。350$あれば日本⇔カナダの往復切符が買えるのだから、高すぎるのではないかと値引き交渉をしたが、「行かれた方の感想を聞きますと決して高くはないと言ってます」と添乗員の説明で、渋々承諾した。
 チャーターしたヘリコプター代を人数で割るからどうしても高額になるのだとか?

オプショナル料金40000円

 [ロライマ]は標高2,772m。数百億年前に地殻変動で隆起し、平地とは全く別な環境下に置かれてしまって、植物や動物の生態系もその当時のまま進化が止まってしまったそうである。
 ヘリコプターは2機。私たちは5人乗りのヘリに乗り込んだ。
 操縦席の隣の席はじゃんけんで決める。(250人抜きをしたことがあるという)斉藤さんに勝ち抜いた妻殿はじゃんけんに強いので、往きは私が操縦席の隣に座って写真撮影にのめり込むことができた。
 6時5分に飛び立ったヘリコプターは[ロライマ山]迄40分も掛かった。日が昇り始める頃の[グランサバンナ]」を空から眺めながら、インディオ達が[悪魔が住んでいる山]と恐れる[ロライマ・テプイ]へと向かう。

ロライマ・テプイ山頂

 私がそのまんま孫悟空になった気分だ。ヘリ独特の自在快感を堪能した。
 垂直に屹立と切り立った岩に圧倒される。遠距離から眺めると頂上が平らなテーブルのように見えるので[テーブルマウンテン]と総称して呼ぶが、こうした大小の山々が144もあるという説もある。現地ではTEPUI[・・・テプイ(山々)]と呼んでいる。

 早朝と言うこともあって上天気。雲はロライマ山の遙か下の方に浮かんでいた。
 ロライマ はギアナ高地のベネズエラ、ガイアナ、ブラジルの三つの国境にまたがっているテーブルマウンテンである。      
 ベネズエラのカナイマ国立公園内に位置し、標高は2,810mである。
 ロライマはペモン族の言葉で偉大という意味である。サバンナの真中に、1,000m近く切り立った壁は、遠くから見ると陸に浮かぶ軍艦と呼ぶ。各大陸のプレートテクトニクス活動で、ギアナ高地付近は移動の回転軸にあたると考えられている。このため火山噴火や地震などの地質学的な変化の影響をほとんどうけず、ゴンドワナ大陸の頃の、地球では最古の岩盤がそのまま残っていると言われている。

《ロライマ山頂の奇岩》

 ペモン族は、テーブルマウンテン形状の山をテプイと呼ぶが、なぜかロライマと隣のテーブルマウンテン・クケナン山の2つだけはテプイと呼ばない。理由は不明であるが、かれらの信仰に由来していると考えられている。

《ロライマ山頂の奇岩 2》

 下界を拒絶するように熱帯のジャングルにそそり立つこの山は、数世紀にわたる探検家の探索によって、頂上に上るルートが発見されてきた。山頂には、一面に水晶が落ちているクリスタル・バレーや、岩に穴があいたベンターナなどもある。山頂の一角には、ベネズエラ・ブラジル・ガイアナの国境3つが交わるトリプルポイント(三国国境)が存在する。
 カリブ海からの湿った空気が常に入り込んでくる。このため、常に湿度が高く、頂上の気候は目まぐるしく変化する。大雨が降ったり、晴れたと思うとすぐに濃い霧がでたりと、同じ天候が10分と持たない。

 【 記録に残る初登頂は、1884年12月18日、イギリスの植物学者であったイム・トゥルンとハリー・パーキンスによる。しかし、ヨーロッパ人ではじめてロライマを発見したのは、ドイツ人の探検家、ロバート・スコムバーグで1838年のことである。初登頂を行ったイム・トゥルンはイギリスに帰国後、その時に撮影した写真を用いた講演会を開いた。その聴講者のなかにたまたま、アーサー・コナン・ドイルがいた。ドイルはロライマの風景に感激し、自身のSF小説『失われた世界』の舞台にした。
 ロライマはテーブルマウンテンの中では比較的登山しやすい山である。麓のサン・フランシスコから5泊6日の日程で登ることができる。

しかし雨季になると、クケナン山から流れ落ちるクケナン川が増水し、近づくことができない。ブラジル側から登山する時はボア・ヴィスタを拠点に登頂するのが一般的で6泊7日程の日程で登ることができる 】

《ロライマ山頂の奇岩 3》

 山頂に第一歩を踏みしめてまずビックリ。小砂利が全て[水晶]だった。山の上の方で大量の恐竜などが化石化したもので、数百メートルがカルシウム層になっているから、それが水晶層になったのだという。
 頂上の景色は、松島の奇岩を連想していただければいい。過酷な気象条件が表面を摩訶不思議な世界に変えた。誰かが彫刻でもしたのかと思われるような岩があり、いたずら坊主が工夫を凝らして積み上げたのかと思われるような形のおかしな岩があり、其処に居るだけで、足下から感動が込み上げてくる。

厳しい気象条件を生き抜いてきた可憐な花

 見るからに強い殻に包まれた草花も、この厳しい気象条件を生き抜いてきた可憐な物ばかりだし、ぴょんぴょん跳ねる必要のない[蛙]はよちよち歩きで移動する。
 このオプショナルツアーは今年の7月から始められたツアーである。天候が悪ければ飛べないから、私たちは幸運だったといえる。こうした前人未踏の地であるから、どこどこも自然そのもの、まさに数百億年前にタイムスリップした世界だった。

 

発見者のパイロットが自分の名前を命名した

[ロライマ・テプイ]の隣の[クケナン・プテイ]への着陸もトライしてくれたが、強風に煽られて危険だと言うので断念した。ロライマ・テプイとはちょっと違った頂上の顔をしていた。
 帰りのフライトでは特等席は他の人に譲った。ヘリのパイロットがこのオプショナルツアーを開拓するのに、飛行コースを見つけなければならなかったと話す。
 ヘリだけしか潜り抜けられない断崖のポケットがあり、そこに峻厳美麗な[大滝]があった。驚くべき水量である。滝のしぶきでヘリがずぶ濡れになってしまった。
 滝の名前は発見者のパイロットが自分の名前を命名したそうである。
 宇宙を旅行して新星に着陸したような錯覚を覚え、心臓の鼓動までが躍動した。生きていて良かったという興奮が何時までも覚めなかった。 
 二度と来られるような処ではないので、高額料金を払ったが、ヘリコプターに乗って正解だったと思った。350$以上の、いや、その数十倍の価値があったと思った。
 

《ベネズエラとブラジルの国境》

カナイマへのフライトまで時間があったから、ベネズエラとブラジルの国境で写真撮影をしたり、ブラジル側の国境の町[パカライマ]での散策を楽しんだ。
 11時55分発・サンタエレナ空港からカナイマ空港までは1時間である。
 DC-3に乗客は15人だけ。飛行機が着くと[キャラバントラック(踏切のような黒と黄色の縦縞模様)]が横付け、2分ほどで[ホトウル・ヴェンサ・ロッジ]に到着した。
 ロッジは[オリノコ川]の支流[カロニ川]の広大なラグーンに面していて、[アチャの滝]を初めとする横一線の6つの滝が目の前に見ることが出来る。
 このロッジに3連泊し、このロッジを基点にメインのアドベンチャー・トラベルが繰り広げられるのである。
 昼食後、部屋割りが決まったが、のんびりする時間もなく慌ただしくキャラバントラックに乗って船着き場へ移動した。

 カマイナラグーンの景観にどっぷり浸りながら、風変わりな格好の[テプイ]に驚喜したり、珍しい風景を捕まえたりとばかり、興奮し、ぱちぱちシャッターを押しまくった。
 

《カナイマ国立公園 カラオ川》

 ロッジからは下流になる[カラオ川]をさらに下がってゆく。ボートは細長く二人ずつ座れるしきり(幅20㎝程の座席)が10ほど有り、その中央の位置に座る。
 エンジンは世界の[ヤマハ]である。成る程納得だった。ボートを下りてジャングルをトレッキングする。暫くすると[ユリの滝]に出た。川の色は濃い紅茶色。テプイのカルシウム層を何年も掛けて浸透して流れ出てきた水だから茶色になったのである。河岸に砂浜らしきところがあった。真っ白く粉のような細かい粒子の砂が印象的だった。